排水処理・省エネ・脱炭素のお役立ち情報を提供する「エイブルブログ」。
2回シリーズの前回は「電気」の省エネ対策を取り上げました。
第2回となる今回のテーマは「熱」。
排水処理設備の蒸気・燃料削減に関わる3つの代表的な省エネ対策を、削減効果の大きさとあわせて解説します。
なぜ今、排水処理設備の「熱」に注目すべきか
排水処理設備というと曝気ブロワなど「電気」のイメージが強いかもしれませんが、実は「熱」の削減も見逃せません。
嫌気性処理(メタン発酵)ではバイオガスボイラーで蒸気を作ることができ、また、食品工場などでは洗浄工程から出る高温排水の廃熱回収が可能です。
電気と同様、熱の省エネにもいくつかの切り口があります。
今回は代表的な3つのテーマを、削減効果の大きさとあわせて整理しました。
排水処理設備の熱の省エネ対策 テーマ一覧
| テーマ | 対策 | 削減効果の大きさ |
|---|---|---|
| 1 | 嫌気性排水処理×バイオガスボイラーで蒸気の省エネ | (最大) |
| 2 | スパイラル熱交換器による原水予熱で蒸気を削減 | |
| 3 | 高温排水の廃熱回収+ヒートポンプでお湯を製造 |
以下、それぞれのテーマの内容と、代表的なメーカー製品を紹介します。
テーマ1|嫌気性排水処理×バイオガスボイラーで蒸気の省エネ
嫌気性処理(メタン発酵)は、酸素を遮断した状態で嫌気性微生物が排水中の有機物をメタンガスに変換する処理法です。
発生したメタンガスは都市ガスの主成分と同じであるため、ボイラーや発電機の燃料としてそのまま利用できます。
前回の「電気編」では曝気ブロワが不要になることによる電力削減を紹介しましたが、実は「熱」の面でも大きなメリットがあります。
嫌気性処理では、発生したメタンガスをボイラーの燃料として使う「バイオガスボイラー」を使用すれば、既存蒸気ボイラーの化石燃料(重油・都市ガス)の使用量を抑えることができ、また、原水加温用蒸気も賄うことができます。
具体的な事例として、濃厚な果実類加工排水(6m3/日、BOD=100,000mg/L、CODcr=160,000mg/L)をメタン発酵処理した実績では、1日あたり290Nm3のメタンガスが発生しています。
これは都市ガス使用量に換算すると1日あたり250m3の削減に相当し、燃焼由来のCO2排出量(Scope1)を1年(300日)あたり168ton削減できる計算になります。
発生したメタンガスをバイオガスボイラーの燃料としてそのまま活用することで、化石燃料由来のScope1排出量を直接的に削減できる点が、熱の省エネ対策としての大きな特長です。

- エイブル「メタン発酵排水処理システム とくとくーぶぶぶ」
(従来メタン発酵の適用が難しかった食品排水にも対応範囲を拡大した嫌気性処理システム。創エネ・省エネ・汚泥削減を同時に実現)https://ablewater.co.jp/products/tokutoku/

テーマ2|スパイラル熱交換器による原水予熱で蒸気を削減
嫌気性処理の加温用蒸気をさらに削減する方法として、UASBリアクターなど反応槽から放流槽へ向かう処理済みの温排水と、これから処理槽へ投入する原水との間で熱交換を行う方法があります。
反応槽内の生物処理では発熱を伴うため、放流前の処理水は原水よりも高い温度を保っていることが多く、この熱をそのまま捨てずに原水の予熱に再利用することで、原水加温にかかる蒸気の使用量を抑えることができます。

この用途に適しているのが「スパイラル式熱交換器」です。
2枚の金属板を渦巻状に巻き付けた単一流路構造のため、高温・低温の両流体が完全な向流となり効率的な熱回収が可能なうえ、流速が上がることでスケール(汚れ)が剥離しやすく、固形分を含む排水でも目詰まりしにくいという特長があります。
もともとパルプ排水用の熱交換器として開発された経緯もあり、排水処理分野での実績が豊富です。
- クロセ「スパイラル式熱交換器」
(完全向流構造による高い熱回収効率と、単一流路によるセルフクリーニング性を両立。排水処理用の熱交換器としても実績豊富)
https://www.kurose.co.jp/sh_merit.htm
テーマ3|高温排水の廃熱回収+ヒートポンプでお湯を製造
食品工場などでは、生産設備の洗浄工程から出る温排水(40〜50℃程度)がそのまま処理槽に流入し、熱が未利用のまま捨てられているケースがあります。
この排水熱をヒートポンプで回収し、工場内で使用する洗浄用温水などを製造することで、従来ボイラー・蒸気で賄っていた温水製造分の燃料使用量を削減できます。
あわせて、処理槽に流入する排水の温度が下がることで、好気性微生物にとって適温に近づき、処理の安定化につながる効果も期待できます。
導入事例として、天然調味料メーカーの株式会社マルハチ村松 焼津エキスパート工場では、洗浄工程から出る温排水(45〜50℃)を熱源とする水熱源ヒートポンプを導入し、蒸気で18℃から95℃まで加熱していた洗浄用補給水を、ヒートポンプで53℃まで予熱する方式に切り替えました。
これにより蒸気の負荷(温度差)を大幅に低減し、一次エネルギー使用量を65%、CO2排出量を64%、ランニングコストを69%削減できたと報告されています。
また、処理槽の水温が約35℃まで低下したことで、排水処理の安定化にもつながったとされています。
代表的なメーカー製品
- 神戸製鋼所「超高効率高温ヒートポンプチラー HEMシリーズ」
(水熱源による高効率な温水製造が可能な産業用ヒートポンプ。マルハチ村松の導入事例でも採用)
https://kobelco-production.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/s3fs-public/document/2026-06/heat-pump-chiller_20260423.pdf - 株式会社マルハチ村松「洗浄温水の熱源に「ヒートポンプ」を導入 温水の安定供給と大幅な省エネを実現」
(導入事例レポート)
https://www.jeh-center.org/asset/00032/monodukurinidenki/vol6_maruhachimuramatsu.pdf
熱の省エネ対策を進める際の進め方
熱の省エネは、電気の省エネと同様、まずは工場内の熱の流れ(どこでどれだけの熱を使い、どこでどれだけの熱を捨てているか)を可視化することが第一歩です。
その上で、
- 高濃度排水ならば嫌気性排水処理のバイオガスボイラーで蒸気製造
- 熱交換器・ヒートポンプなど、廃熱源に合った廃熱回収
- 投資回収年数の試算・補助金活用の検討
という順番で検討を進めると、無理なく熱の省エネに取り組みやすくなります。
廃熱回収設備の導入にも国の補助金が活用できる場合があるため、更新を検討するタイミングでは補助金情報も併せて確認することをおすすめします。
よくある質問
- 3つのテーマのうち、どれから着手すべきですか?
-
高濃度排水を排出している場合はテーマ1(嫌気性処理)がおすすめです。
また、既に嫌気性処理を導入している場合はテーマ2(原水予熱)との相性が良く、高温排水が発生する工場ではテーマ3(廃熱回収ヒートポンプ)の効果が見込みやすい傾向にあります。まずは自社の排水・排熱の状況を排水処理装置業者に相談することをおすすめします。 - 熱交換器とヒートポンプはどちらを選べばよいですか?
-
熱交換器は温度差を利用して熱を移すシンプルな設備で、廃熱源の温度が利用先の必要温度より高い場合に適しています。
ヒートポンプは電力を使って熱をくみ上げるため、廃熱源の温度が低い場合や、より高い温度が必要な場合に有効です。 - 熱の省エネ対策と補助金は同時に検討できますか?
-
はい。嫌気性排水処理や廃熱回収ヒートポンプなどの省エネ設備は補助金の対象となる場合が多く、更新計画と合わせて補助金活用を検討することで投資回収を早められる可能性があります。
まとめ
- 排水処理設備の熱の省エネは、①バイオガスボイラーによる蒸気代替②スパイラル熱交換器による原水予熱③廃熱回収ヒートポンプによるお湯の製造の3つが代表的なテーマ
- 嫌気性処理を導入している場合は、発生するバイオガスを蒸気の熱源として活用できるかどうかも確認したい
- 高温排水が発生する工場では、ヒートポンプによる廃熱回収で蒸気コストと処理の安定化を同時に実現できる可能性がある
電気の省エネ対策については前回の記事もあわせてご覧ください。
排水処理の省エネ設計・施工なら、総合排水処理メーカーのエイブルへ
今回ご紹介したバイオガスボイラー・熱交換器・ヒートポンプなどの熱の省エネ設備は、工場ごとの排水・排熱の状況によって最適な組み合わせが異なり、設計力が効果を大きく左右します。
株式会社エイブルは、排水処理設備の設計・施工・管理を一気通貫で手掛ける総合排水処理メーカーです。
特定メーカーの製品だけにとらわれず、各社の省エネ設備を組み合わせた設計・施工に対応できるのが強みです。
他社が施工した既設の排水処理装置についても、改造・更新・省エネ化のご相談を承っております。
「熱をうまく使えているか分からない」「嫌気性処理への切り替えを検討したい」といったお悩みも、まずはお気軽にご相談ください。
排水処理設備のCO2削減・省エネ・能力不足・更新でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
製品カタログ・技術資料・導入事例など、まずは資料請求も可能です。
※本文中のメーカー名・製品名は代表的な例として紹介しており、特定製品の推奨を意図するものではありません。
導入にあたっては各設備条件に応じた検討が必要です。数値・事例は公開情報に基づく参考値であり、効果を保証するものではありません。


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